今まで日本の木造建築や、そして伝統的な建物を見るとその地域の気候や暮らしがわかることについて触れてきました。
ここからは視野を広げて環境と地域社会に根付いた世界の家々について、少しだけ触れていきたいと思います。
写真はグリーンルーフ(草屋根)という屋根です。白樺等の樹皮を敷いてその上に芝を敷き詰めるか、土を敷いて草の種を蒔きます。
屋根の草は、夏になると蒸散作用で屋根から家の熱を逃し、冬は外の寒さを和らげる断熱材の効果があります。
ノルウェーは、国土の北半分が北極圏内にあり、夏場は平均13から15℃、冬場は平均-3から-5℃です。日本同様四季のある亜寒帯気候の国で、季節によりオーロラが観測できます。
写真は合掌造りという茅葺き屋根です。茅とは屋根を葺く草の総称で、茅の材料はイネ科やススキ、ヨシ等を束にしたものです。
その茅を大きく束ねて積み上げ、切妻屋根(三角屋根)の形状にします。これにより屋根が大きく傾斜しているため雪が自然落下し、積雪による重さから家を守ります。
合掌造りは日本の豪雪地帯の各地にみられるもので、この写真の場所である白川郷は平年74㎝の積雪がある地域です。
写真はキクラデス様式の建築です。この壁を白くしているのはこの地中海沿いの地域で取れる石灰で、それを外壁にたくさん塗っています。
この壁石灰による白い壁は白さで地中海特有の強い日差しによる紫外線を防ぎ、尚且つ建物全体が高温になってしまうのを防ぎます。
写真はギリシャ領のサントリーニ島(ティラ島)で夏場は約30℃、冬場でも約14℃という気温が安定していて暖かい地中海性気候の地域です。
このように日本のみならず、世界の建物を見てもその環境、地域社会にあったものが多いのです。
自然と人との程よい距離感、地域の人同士の結び付き、郷土愛。人と人、自然と人が結びついた建物、そこに持続可能なまちづくりのヒントがあると考えました。
古来より私たちと共に進化し続けてきた建造物。近年は地球温暖化による地球全体の急速な気温の上昇や低下。
環境は変わり続けています。
これからの未来を守る為にも、一例として温故知新の精神で今一度、世界中の伝統的な建築を振り返りみるのも意義のある行為だと思います。